東洋経済オンラインが『宝島社「身売り説」新潮社「危機説」迎える正念場 附録ブームが一服も、大量配本止められず』(印南志帆記者)とうタイトルで、宝島社、新潮社の窮状を伝えている。
宝島社は一時期、著名ブランドや版権キャラクターのグッズの付録を付けた女性誌が大ヒット。コンビニ向けの坂路も開拓し、売れ上げは2018年にピークを迎えた。その後、コロナ禍で売り上げは急降下、そのまま業績は回復しなかった。2023年8月期の売上高は約221億円と、最盛期の約半分、前期比で3割近くの落ち込み。営業損益も、2022年度に21億円、2023年度は19億円と2期連続の赤字。
2023年7月には経営していた静岡県伊東市のホテル、11月には千代田区一番町にある社屋の別館を売却した。
さらに、昨年暮れに、カリスマ創業者の蓮見清一氏が急逝した(享年80歳)。そのために、会社の売却もささやかれているという内容だ。
一方の新潮社は、稼ぎ頭の文庫本「新潮文庫」、週刊誌『週刊新潮』が低迷。一時期好調だったローティーン向けのファッション誌『ニコラ』も失速。5年前の2017年度には182億円あった売り上げは、2022年度に154億円に下落し、昨年度もさらに落ち込んだ。なによりも新潮社はデジタル化に大きく出遅れ、競合する文藝春秋には大きな差を付けられた。
というわけで、2社の窮状、危機が記事になったわけだが、即、身売り、廃業、倒産などいうことにはならない。記事でも説明しているように、宝島社には、アメリカにTJホールディングスという投資で大きな利益を産んだ子会社がある。また、新潮社は、オーナーが本社がある神楽坂界隈の大地主である。
よって、本業の出版業は危機だが、会社としては危機ではない。しかし、紙の出版の危機であることには変わりない。
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