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2022/01/28●2021 年の出版市場は紙が1.3%減 電子が 18.6%増 の1 兆 6742 億円で3 年連続のプラス

 出版科学研究所から2021年の出版市場 (推定販売金額)が発表された。それによると、紙+電子の出版市場規模は前年比 3.6%増の 1 兆 6742 億円と 3 年連続でプラス成長。電子出版が18.6%増と引き続き大きく伸長したことが大きく貢献した。出版市場全体における電子出版の占有率は、27.8%で、前年の 24.3%から 3.5 ポイントの上昇だ。

 その内訳は、電子コミックが20.3%増の 4114 億円、電子書籍が12.0%増の 449 億円、電子雑誌が10.1%減の 99 億円。電子コミックは『東京卍リベンジャーズ』(講談社)などの映像化作品のかヒットに加え、韓国発の縦スクロールコミックが大きく伸びた。電子市場におけるコミックの占有は 88.2%(前年より 1.2 ポイント増)と 9 割に迫り、書籍、雑誌は1割強にすぎない。

 一方、紙のほうは前年比1.3%減の 1 兆 2080 億円で、その内訳は、書籍が2.1%増の 6804 億 円、雑誌が5.4%減の 5276 億円。もはや紙雑誌は成立しなくなりつつある。

22/01/27●フリーランス 出版業界労組が報酬10%引き上げ求め初の要望へ

 今日のNHKニュースによると、このほど、フリーランスとして働くライターや編集者など200人余りでつくる労働組合「出版ネッツ」が、報酬の10%引き上げを求め、業界団体に初めて要望を行うことを決めたという。出版業界だけでなく、音楽や映像制作などほかの業種で働くフリーランスにも呼びかけるという。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220127/k10013451881000.html

 フリーランスといっても、非正規の一時雇い労働者と同じ。いくら働き方が多様化したとはいえ、待遇まで多様化はしていない。とくに出版界の場合、いまはウエブでの原稿制作まであり、昔よりはるかにハードになっている。

 NHKニュースが伝えた、いまのフリーランスの状況は、次のとおり。

《厚生労働省などによりますと、企業などから個人で仕事の発注を受け報酬を得ている人は2019年の時点でおよそ170万人に上るとされ、年々増えているとみられます。
 フリーランスは雇用契約を結んで働く労働者のように定期昇給やベースアップなどで収入が増えるということはなく、法律で定める最低賃金も適用されません。
 厚生労働省などが設けたフリーランスで働く人を対象にした相談窓口「フリーランス・トラブル110番」には去年11月末までの1年間に報酬の不払いや一方的な減額などの相談がおよそ4000件寄せられていて、政府も対策の強化を検討しています。》

22/01/21●2021年12月の出版界は前年比で10.2%減。今後も人口減で減少は続く

 2021年12月の書籍雑誌推定販売金額が公表された。それによると、販売額は1030億円で、前年比10.2%減。その内訳は、書籍が541億円で同2.0%減、雑誌が489億円で同17.8%減となっていて、相変わらず雑誌の落ち込みが激しい。
 雑誌の内訳をみると、月刊誌が427億円で同18.4%減、週刊誌が62億円で同14.0%減。どちらも、大幅に落ち込んでいる。その一つの原因は、昨年の12月に『鬼滅の刃』最終巻の初版395万部が発行され、『呪術廻戦』とともに、コミックが爆発に売れた反動である。

 12月の推計公表とともに、2021年通年の出版物推定販売金額も公表された。それによると、書籍が15年ぶりにプラスとなったこともあり、全体で1兆2079億円、前年比1.3%減。近年になく落ち込みが止まり、ぎりぎりのところで1兆2000万円台をキープした。とはいえ、書籍はかろうじてプラスになったものの、雑誌は5000億円を下回る寸前のところまできている。

 少子高齢化で人口減。毎年、約50万人の日本語人口が減っているのだから、売り上げは減るにきまっている。

22/01/19●講談社の女性誌「with」が 適時刊行に

 講談社は女性誌「with」を3月28日発売の5月号をもって適時刊行に移行することを発表した。女性誌もいまやウエブが中心で、紙で定期刊行する状況ではなくなっている。すでに講談社は「女性誌ネット」があり、今後はそのなかの「with online」を中核とし、従来の紙版に加えて「ユーザーのライフスタイルに寄り添ったコミュニティとサービスを付加した次世代の事業モデルを構築する」という。現在、「with online」は月間 1 億PV超で女性誌メディアとしては有力なメディアの1つ。

22/01/18●英BBCが受信料制度を見直し。NHKにも波及の可能性が!

 英国のドリース・デジタル・文化・メディア・スポーツ相は、17日、下院での演説で、公共放送BBCの受信料(ライセンス料)制度を見直すと表明した。

「技術の変化とともに、とくに若い世代の視聴者の間で習慣も変化している」と指摘。BBCの長期的な資金調達の在り方、罰則規定を伴う受信料支払い義務について「適切かどうかをいまこそ真剣に問うべきときだ」と述べた。
[ロイター電]
https://jp.reuters.com/article/britain-bbc-idJPKBN2JS085


 BBCの受信料をめぐる動きは以前から話題となっていた。すでに英国政府は、BBCの受信料制度を廃止し、希望者のみが視聴料を払う「サブスクリプション」の導入を視野に入れていると報じられてきた。
 BBCの予算の約75%は受信料収入で、残りは商業活動や交付金。受信料の支払い世帯は約2620万で、支払い率は90%以上とされている。サブスクリプション制度が導入されれば、この構造を大きく変わる。
 世界の公共放送のモデルとなったBBCのこの動きは、今後、日本のNHKにも大きな影響を与えるのは間違いない。すでに、動画配信を行っているNHKに対し、受信料を廃止してサブスクリプション制度に移行すべきという議論がある。ネット時代のいま、こちらのほうが時代に即しているし、経済合理性があるうえ、なによりもフェアだ。
 ところが、日本政府とNHKは、この動きをかたくなに拒否してきた。
 昨年、12月2日、NHK受信料に関しての裁判で、耳を疑うような判決が出た。NHKの放送を視聴できないように加工したテレビを自宅に設置した東京都の女性が、受信契約を締結する義務がないことの確認を求めた訴訟で、逆転敗訴したのだ。
 放送法64条は「NHKの放送を受信することができる受信設備(テレビ)を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない」と規定している。ところが、判決はこの条文を無視し、「NHKが映らないテレビでも受信料を払え」としてしまったのである。
 なにもかも、時代遅れで、途上国に向かって転落していく日本。いったい、どうすれば止まるのだろう。

22/01/14●テレビ現場の最下層「AD」の呼称がなくなる

「AD」とは「アシスタントディレクター」のことで、テレビの制作現場では一番下のポジションで働く雑用係の代名詞。家にも帰れず、局に寝泊まりするなど長時間労働は当たり前。時には危険なこともさせられる〝3K仕事〟労働者。

 しかし、最近の「働き方改革」により、ADと呼ぶのをやめようという流れになっていると、「東スポ」が伝えている。その代表的なのは日本テレビで、「AD」(エーディー)とは呼ばず、「若手ディレクター」、略してYD(ヤングディレクター)と呼ぶことになったとか。また、「SD」(サブディレクター)などという呼び方もでてきているという。

 しかし、どうもあまり代わり映えしない。呼び方は変わっても、仕事内容はあまり変わっていないようだ。

22/01/13●NHK字幕問題「映画関係者や視聴者に本当に申し訳ない」と前田会長が陳謝

 2021年12月に放送されたNHK・BS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」に不確かな字幕があった問題で、NHKの前田晃伸会長は13日に開かれた定例記者会見で「映画関係者や視聴者に本当に申し訳ない。チェック機能が十分働かなかったのが一番大きな問題だ。非常にお粗末だと思う」と陳謝した。制作したNHK大阪放送局の角(かど)英夫局長も定例記者会見で「真実に迫る姿勢を欠いていたと言わざるを得ない。あの字幕は入れるべきではなかった」と述べて陳謝した。

 放送後から問題になっていたのは、五輪開催中、河瀬さんから依頼を受けた映画監督の島田角栄さんが競技場の外で出会った男性にインタビューする場面。NHKはその様子を撮影・編集し、男性の顔にぼかしを入れた上で、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕を付けて放送した。これは、明らかに五輪反対デモに対する歪曲(捏造)報道で、陳謝で済むような問題ではない。また、事実誤認として片付けるような問題ではない。

 しかし、なぜこうしたことが行われたのかに関しては、今後も解明されないだろう。解明されたら、NHKは報道機関ではなくなってしまう。

22/01/10●「HON.jp」による「2022年出版関連の動向予想」のポイントメモ

「HON.jp」編集長の鷹野凌氏による、今年の出版界の動向予想が出た。本当に参考になるので、以下、ポイントを引用させてもらう。
→ https://hon.jp/news/1.0/0/32010

政治的環境(Political / 立法・行政・司法)

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定発効(2022年1月1日)
改正個人情報保護法全面施行(2022年4月1日)
国際海賊版対策機構(IAPO)設立(2022年4月)
第26回参議院議員通常選挙(2022年7月)
日本政府によるデジタル広告規制の強化(2022年半ば?)
各国政府による巨大IT企業への規制強化傾向
各国政府による表現規制の強化傾向
アメリカが抜けたTPP11(CPTPP)に中国・韓国・台湾などが加盟申請
アメリカと中国の対立傾向と日中韓の関係冷え込み

経済的環境(Economic / 主に企業の動向)

インボイス(適格請求書)制度開始(2023年10月1日)
コロナ禍で巣ごもり需要拡大
伝統的なメディア市場(とくに新聞と雑誌)の縮小傾向
サブスクリプション(定期購読)の拡大傾向
電子出版市場(とくにマンガ)の拡大傾向
デジタル含む同人市場(というかクリエイターエコノミー)の拡大傾向
巨大IT企業などによる表現(広告含む)の自主規制強化
インターネット広告市場は再成長?

社会的環境(Social / 文化・教育・ライフスタイルなど)

高校「情報Ⅰ」必修科目化(2022年4月1日〜)
成人が18歳に(2022年4月1日〜)
国立国会図書館、入手困難資料の個人送信開始(2022年5月~)
文化庁、京都移転(2022年度末〜2023年度初頭?)
図書館資料メール送信対応と補償金制度開始(2023年5月~)
まだ終わらないコロナ禍と感染予防のための“遠隔化”
少子高齢化と生産年齢人口、日本語人口の減少傾向

技術的環境(Technological)

「Internet Explorer 11」サポート終了(2022年6月15日)
「Windows 8.1」延長サポート終了(2023年1月10日)
「Office 2013」延長サポート終了(2023年4月11日)
「Google Chrome」サードパーティーCookieのサポート完全廃止(2023年後半?)
EPUB 3.3 / EPUB Accessibility 1.1がW3C標準仕様に(2023年︖)
第5世代移動通信システム(5G)のさらなる普及
コンテンツ関連のAI技術が普及期へ
暗号資産やNFT(ブロックチェーン技術)への注目と猜疑
VR / AR技術の活用(メタバース)

2022年には何が起こる?
 これらを踏まえた上で、2022年にはどんなことが起こるか、予想してみました。以下の5点です。
メディアビジネスの転換を進めよう(提案)
埋もれていた名著の再発見と復刻が進む
縦読み含めメディアミックス展開が拡大する
電子図書館の普及でコンテンツ供給が急増する
映像を活用したマーケティング活動が広がる

22/01/03●書籍販売の「コロナ特需」が終わりに

 産経新聞(1月3日)が、「街の書店、コロナ特需に陰り SNSとの相乗効果カギ」という記事を出した。記事によると、「コロナ禍の巣ごもり消費で息を吹き返した街の書店の好調ぶりに、陰りが出ている」とし、その理由として「リモートワーク関連書の需要が一段落」「国内旅行やイベントなど別の娯楽に人々の目が向き始めた」などを挙げている。

 しかし、特需と言ってもそれほどのことでなく、本の売り上げは年々落ち込んでいる。雑誌にいたっては、もうほとんど売れない状況になっている。「巣ごもり特需」と言っても、去年は『鬼滅の刃』が爆発的にヒットしただけのことだ。

 記事の終わりは、「TikTok」によって筒井康隆の既刊文庫「残像に口紅を」が、10~20代の読者を掘り起こして増刷されたことで締めているが、これとてたまたまの話にすぎない。

21/12/18●「TikTok売れ」で過去の小説が再ヒット11万部増刷!

 TikTokで紹介されたモノが売れる現象「TikTok売れ」で、過去に発表された小説が再びヒットするケースが相次ぎ、NHKも報道で取り上げた。

 いちばん売れたというのが、筒井康隆が1989年に発表した小説『残像に口紅を』。TikTokで紹介されたことをきっかけに話題となり、今年の7月以降、11万部余りも増刷したという。紹介したのは人気のクリエイター、けんごさん(23)。紹介した動画の再生回数は、2021年12月現在、890万回にも上った。

 けんごさんのインフルエンサーぶりはすごく、出版社と組んでけんごさんみずからが選ぶ「けんご大賞」が設立された。選考委員は、けんごさん1人で、最初の「ベストオブけんご大賞」は綾崎隼の『死にたがりの君に贈る物語』が選ばれた。

 TikTokが本との“セレンディピティ”(偶発的な出会い)を提供することは、ついこの前までわからなかったことで、これをきっかに読書の習慣が薄れてしまった若者に読書の機会が増えることが期待される。