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22/06/20●小学館の黒字決算に見るデジタルシフトによる出版の変質

 先日、6月10日、小学館は第84期(2021.3.1~22.2.28)決算を発表した。売上高は1057億2100万円(前年比12.1%増)。経常利益は89億4500万円(同23.4%増)、当期利益は59億9500万円(同5.7%増)で増益。4期連続の黒字決算となった。売上高が1000億円を超えたのは77期以来、7年ぶり。
 売上高の内訳は、「出版売上」470億5300万円(同0.6%増)、「広告収入」91億3700万円(同0.5%増)、「デジタル収入」382億8700万円(同25.2%増)、「版権収入等」112億4400万円(同43.0%増)。全4分野で前年実績を上回り、好調に推移した。
「出版売上」では、「雑誌」が170億2400万円(同7.8%減)、「コミックス」が166億0800万円(同2.3%増)、「書籍」が119億4500万円(同8.2%増)、「パッケージソフト」が14億7700万円(同42.8%増)。4部門中、雑誌以外の3部門で増収となった。

 この決算で重要なのは、「デジタル収入」382億8700万円、同25.2%増、「版権収入等」112億4400万円、同43.0%増という2つの分野が、「出版売上」を超え、しかも全分野の半分を占める500億円に迫っていることだ。

 つまり、小学館は雑誌が主力の出版社からデジタル、版権収入が主力の小学館へと移行しつつあるということ。これは、講談社、集英社、KADOKAWA、大手でコミックを持っているところはみな同じである。つまり、出版事業はもはやデジタルで成立するようになり、出版社のイメージは従来かたちと変わりつつある。そして、それにともない、書店の価値はどんどん薄れていく。書店数が激減しているのは、こうした現実の反映だ。

22/06/16●「赤坂から書店がなくなる」と朝日新聞記事が嘆いている

 東京・赤坂の「文教堂書店赤坂店」が、ビル建て替えのため6月17日で閉店。その前日、朝日新聞が嘆きの記事を出した。文教堂の閉店で、赤坂駅周辺の書店は実質“全滅”となり、利用者からは「非常に残念」といった声があがっているというのだ。
「書店の減少が止まらない中、赤坂からもなくなってしまうことの寂しさとショックは大きかったですね」
 と、赤坂店を担当する文教堂運営本部のエリアマネジャー、富田利之さん(52)は、朝日記事のなかで語っている。

©️みんなの経済新聞

 2021年3月に老舗の金松堂書店、22年1月にTSUTAYA赤坂店がそれぞれ閉店。周辺の書店は選書専門店「双子のライオン堂」を残すのみとなってしまった。
 しかし、感傷的になっても仕方ない。書店消滅はすべてがデジタル化、オンライン化される時代の流れであり、それにコロナ禍が追い討ちをかけたと言える。

 コロナ禍は、書店よりも飲食店に大きな打撃を与えた。赤坂近辺を歩けば、多くの飲食店が営業停止になっていることに気がつく。
 赤坂に限らず、都内の一等地では、小売ビジネスが窮地に陥っている。書店もそうだが、飲食やそのほかの小売業も高額賃貸料を負担できなくなくなっている。

 現在、生き残っている書店は、大別して2種類だ。一つは、在庫リスクを負わないよう取次から言われるまま本を仕入れている書店と、在庫リスクを負っても店主が自分の店に置きたい本を出版社から直接仕入れる独立系の書店だ。
 文教堂は前者で、赤坂店はコロナ禍で売り上げが半分に落ちたという。今後、こうした書店はネット販売のショールームとして生き残っていくしか道はないのではないだろうか。

22/06/04●今年、あと何誌が休刊?もはや雑誌の寿命は尽きた。

 最近では、ベースボール・マガジン社が発行する専門誌「近代柔道」「ボクシング・マガジン」「ソフトボール・マガジン」「コーチング・クリニック」などが次々と休刊に追い込まれている。今後、これに続く休刊誌が何誌出るかというのが、いまの業界の話題だ。
 もはや、雑誌の凋落はとどめるすべもなく、専門雑誌はもとより、あらゆるジャンル、刊行形態(週刊、月刊、季刊)を問わず、その寿命が尽きようとしている。
 2022年4月の書籍雑誌推定販売金額が発表されたが、総額は992億円で、前年比7.5%減。書籍は547億円(同5.9%減)、雑誌は445億円(同9.5%減)となっていて、やはり雑誌の落ち込みがひどい。その内訳は、月刊誌が382億円(同9.0%減)、週刊誌が63億円(同12.2%減)で、このままいくと近いうちに休刊誌が続出するのは間違いない。ちなみに、2022年1月から4月にかけての雑誌販売額は、前年同期時に比べ、なんと12.6%という大幅なマイナスになっている。

22/05/30●ヤフーがエンタメ系の投稿欄を一部閉鎖。眞子さん記事が最大の原因

 「ヤフーニュース」のヤフコメ欄がまた閉鎖された。今回は、エンタメ系で、週刊誌やスポーツ紙など少なくとも3つのメディアの提供記事が対象。

 共同通信の配信記事は、以下のように伝えている。

《ヤフーがニュース配信サイト「ヤフーニュース」に掲載するエンタメなどの一部記事に関し、誹謗中傷の抑止を目的に読者のコメント投稿欄を閉鎖したことが30日分かった。週刊誌やスポーツ紙など少なくとも三つのメディアの提供記事が対象。これまでも差別的な投稿を個別に削除したり、「炎上」の恐れがある個別記事のコメント欄を非表示にしたりする対策を取ってきたが、今回は特定メディアのエンタメ記事に関するコメント欄を一斉に閉鎖する措置に踏み込んだ。

 ネット上の誹謗中傷はコメント欄を舞台にエスカレートする場合も多く、人を傷つけ自殺者を出すなど深刻な社会問題となっている。》

 この記事では媒体名をあえて書いていないが、3つのメディアというのは、「ポスト」「週刊女性」「東スポ」のこと。閉鎖の原因となった記事は「小室圭・眞子夫妻」ものであるのは間違いない。最近、皇室記事に対して、とくに眞子さん記事に対しては、コメントが荒れている。読者は、思い切り、感情をぶつけて、眞子さんを批判している。それは、誹謗中傷に近い。もっと言葉を選べばいいのにと思うが、そういう人はまれだ。真実よりウソ、賞賛より非難・罵倒のほうがネットでは速く拡散する。

 ツイッターもそうだが、こうした動きが、「言論統制」に向かうのではないかと心配する。

22/05/18●インプレスホールディングスの連結決算、増収増益。出版事業の増益に!

 インプレスホールディングスが、2022年3月期(21.4.1~22.3.31)の連結決算を発表した。それによると、売上高147億7800万円(前年比6.7%増)、営業利益8億4800万円(同3.2%増)、経常利益9億4100万円(同1.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益8億7500万円(同29.5%増)で、増収増益の決算となった。
 コンテンツ事業の売上高は123億1800万円(同9.7%増)、同事業の出版・電子出版の売上高は80億3200万円(同6.9%増)と堅調に推移している。

22/05/16●KADOKAWAの連結決算好調、ドワンゴと合併以来最高に!

 KADOKAWA は、2022年3月期(2021.4.1~22.3.31)連結決算の概要を発表した。それによると、売上高は2212億0800万円(前年比5.4%増)。営業利益は185億1900万円(同35.9%増)、営業利益率は8.4%(同1.9ポイント増)、経常利益は202億1300万円(同40.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は140億7800万円(同46.9%増)となっている。
 いずれも大幅な増収増益で、これは、2014年10月にドワンゴと経営統合して以降、過去最高である。
 KADOKAWAでは、2023年3月期を最終年度とする中期計画の営業利益目標を1年前倒しで達成。今回、新たな中期計画を策定した。その目標は、3年後の2025年3月期に、売上高2500億円、営業利益250億円を達成するというものだ。

22/05/08●神保町のランドマーク三省堂書店神保町本店が一時閉店

 本社ビルの建替えに伴い、神保町のランドマークとして親しまれた三省堂書店神保町本店が一時閉店した。完全な閉店ではないのに、この日の閉店前には、正面入口で亀井崇雄社長と杉本佳文店長が客や関係者に感謝の意を伝える挨拶セレモニーを行なったため、多くの書店ファンが集まった。
 三省堂ビルは、三省堂創業百周年にあたる1981年、戦前から営業してきた旧社屋を改築して完成した。地上8階建てで、1階から6階までの売り場面積は約千坪、蔵書は140万冊を誇った。
 亀井社長は建替えについて、「本にしおりを挟むように、また物語を再開するために必要なステップ。第2の創業のつもりで、次世代の新しい書店を目指します」と述べた。

©︎文化通信

22/05/01●2つの図表で見る出版大手の近年の業績は?

 まずは、「出版状況クロニクル168」に、「2020年出版社の実績」(ノセ書店)が掲載されていたので転載する。

https://odamitsuo.hatenablog.com/entry/2022/05/01/000000

 大手3社はデジタルシフトと、それを支えるコミックスが好調で、ここ3年、実績を伸ばしていることがわかる。

 続いては、「業界サーチ」から、「出版大手5社の売上高の推移」

https://gyokai-search.com/3-hon.htm

 2020年の上位5社の売上高は、集英社が前年比14.7%増、講談社は同6.7%増、KADOKAWA(出版事業)は10.8%増、小学館は3.5%減、ゼンリンは4.2%の減少。集英社は『鬼滅の刃』が大ヒットしたことで、前年から2ケタの伸び率を記録。講談社はデジタル関連や版権の収入が向上し、収益に寄与した。

22/04/28●コロナ禍特需は消滅。3月の書籍雑誌推定販売額は1438億円で前年比6.0%減

 出版科学研究所による2022年3月の書籍雑誌推定販売金額は1438億円で、前年比6.0%減となった。内訳は、書籍944億円で(同2.7%減)、雑誌494億円(同11.7%減)。相変わらず雑誌の落ち込みが激しく、その内訳は月刊誌419億円で、(同12.4%減)、週刊誌75億円(同7.5%減)となっている。すでにコロナ禍による「巣こもり特需」は消え、今後さらに落ち込むことが予想される。部数販売による雑誌ビジネスはもう成り立たないと言ってもいいだろう。それは、返品率に現れていて、雑誌全体で39.3%、月刊誌38.9%、週刊誌41.4%と、ほぼ4割が売れ残る状況が続いている。

22/04/15●新聞記者が「憧れの職業」ではなくなったワケとは?

〈現在の大学生には信じてもらえないかもしれないが、かつて大学生の人気企業ランキング50位では、朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社といった全国紙の新聞社が必ず上位にランクインしていた。就職するのは「宝くじを当てるよりも難しい」などという時代があった。〉

 という書き出しで始まる坂夏樹氏(元新聞記者)の「プレジデント・オンライン」の記事『昔は宝くじ以上の競争倍率だった…憧れの職業だった「新聞記者」がここまで没落したワケ』は、なるほどという悲哀にあふれた記事だ。

https://president.jp/articles/-/56554

 坂夏樹氏は、「他社に特ダネを打たれてもいいから休め」「テレビを見て取材すればいい」という編集幹部の言動が出るようでは、新聞(ジューナリズム)は終わりだと指摘する。そして、自身が大学で講師としてジャーナリズムの講義を新聞記者志望の学生に、志望が本気なら、〈例外なく「やめた方がいい」とアドバイスした。〉という体験談を述べる。

 その理由を大学から聞かれると、こう説明したという。

〈「日本の新聞社から、一からジャーナリストを育てる力が失われつつある」と説明したうえで、「安物の新聞記者で一生を終わっていいのなら応援します。でも、真剣にジャーナリズムの世界を目指している学生には、とても勧めることはできません」と曲げなかった。〉

 これは、新聞記者に限らず、出版社の雑誌記者、編集者でも同じだ。私も、かつて同じように、ジャーナリズムに行くべきではないと、相談を受けた学生たちに語ってきた。

 なぜなら、いくら志望しても、新聞社にも出版社にもジャーナリズムなどなくなってしまったからだ。

 坂夏樹氏は、次のように指摘する。

〈デジタル化が進み、人減らしが露骨になってくるのと比例するように、心を病む記者が増えてきた。〉

〈デジタル化の進展による「徹底的な人減らし」。デジタル化で出現した「会話のない職場」。新人の記者はほったらかしにされることが普通になった。〉