7月12日の朝日新聞デジタルに『「もう百科事典はつくれない」元編集者が考えるネット社会の未来』という記事がアップされた。平凡社で、事典編集に長年携わった斎藤文雄氏(77)のインタビュー記事だ。
平凡社の『世界大百科事典』の最新版が最後に刊行されたのが2007年。すでに平凡社では百科事典の編集部すらないという。
百科事典が出せなくなった理由はじつにシンプル。作っても売れないからだ。
以下、斎藤氏の話。
《世界大百科事典の項目数は約9万に上り、筆者は7千人にもなります。何と言っても信頼性が大事ですから、筆者はいずれも各界の第一人者や学界の新進気鋭の学者らを選びます。原稿料だけでも膨大です。こうした先行投資を売り上げで回収するわけですが、出版物で回収するのは今や不可能です。電子版もあるとはいえ、ネット展開でそこまで稼げない。最大手の出版社でも、紙の百科事典はもう出せないと思います。》
《百科事典が売れてビジネスモデルとして成立していた高度経済成長期が、むしろ例外的だったと言った方がよいかもしれません。
居間にズラリと並ぶ百科事典が、一種のステータスだった時代ですね。ほとんど「家具」ですよ。飾って置いておくモノとなってしまったことで、百科事典を「空洞化」させてしまった側面もあるのでしょう。》
《長いこと使っていないという人は、多いでしょう。「家にある百科事典を引き取ってほしい。図書館も古本屋も相手にしてくれない」という問い合わせも、時々あるくらいです。》
https://www.asahi.com/articles/ASR79628JR76UTIL02C.html
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