2021年12月に放送されたNHK・BS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」に不確かな字幕があった問題で、NHKの前田晃伸会長は13日に開かれた定例記者会見で「映画関係者や視聴者に本当に申し訳ない。チェック機能が十分働かなかったのが一番大きな問題だ。非常にお粗末だと思う」と陳謝した。制作したNHK大阪放送局の角(かど)英夫局長も定例記者会見で「真実に迫る姿勢を欠いていたと言わざるを得ない。あの字幕は入れるべきではなかった」と述べて陳謝した。
放送後から問題になっていたのは、五輪開催中、河瀬さんから依頼を受けた映画監督の島田角栄さんが競技場の外で出会った男性にインタビューする場面。NHKはその様子を撮影・編集し、男性の顔にぼかしを入れた上で、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕を付けて放送した。これは、明らかに五輪反対デモに対する歪曲(捏造)報道で、陳謝で済むような問題ではない。また、事実誤認として片付けるような問題ではない。
しかし、なぜこうしたことが行われたのかに関しては、今後も解明されないだろう。解明されたら、NHKは報道機関ではなくなってしまう。
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