日本経済新聞に「消えた出版社の本はどこへ 著作権引き継ぎの課題とは」という記事が出た。ここでの問題は著作権、出版権の引き継ぎだが、「本を生き延びさせるために奔走している人たちがいる」ことを、まずこの記事は紹介している。その一つが今年1月に倒産した仏教書の出版社、サンガ。同社はスティーブ・ジョブズが愛読した『禅マインド ビギナーズ・マインド』(鈴木俊隆著)などのロングセラーを持っているが、こうした書籍が消えてしまうのを防ごうと、元社員がクラウドファンディングで1400万円超の資金を集め、新社の設立に向けた準備を進めているという。
また、昨年6月に廃業した神学や歴史学の人文書を出していた創文社は、オンデマンド出版での出版を講談社に引き受けてもらい、トマス・アクィナス著『神学大全』やホセ・ヨンパルト著『学問と信仰』などの本が生き延びることになった。
記事中で、長谷川一・明治学院大教授(メディア論)はこう述べている。
「出版物の著作権は雑誌の小さなコラムなどにもある。一括で管理することは難しいが、著作権保有者を探す人を支援する仕組みがあってもいいのではないか」
帝国データバンクによると過去20年間の出版社の倒産件数は年平均で約30社。1社あたりの平均負債額は2000年代の3億6400万円から、2010年代は1億5100万円へと減ったというが、今後も中小の倒産・廃業は続くと思われる。