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23/12/06●『あの子もトランスジェンダーになった』が発売中止に!

 2024年1月24日にKADOKAWAから発売される予定だった『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』(著・アビゲイル・シュライアー/監修・岩波明/訳・村山美雪、高橋知子、寺尾まち子)が発売中止になった。発売告知後、日本語タイトルやキャッチコピーがトランスジェンダーに対する偏見や差別を煽るものであると問題視されたことが原因。とはいえ、アメリカでは物議を醸しながら発売されているので、KADOKAWAの措置は過剰反応だろう。

 SNSで抗議されただけで、取次や大手書店を巻き込むような騒動になったわけではない。一般には、そんな本が出ることなどほとんど知られていなかった。この程度で、すでに出来上がっている本の出版を中止するのは、言論の自由に守られた出版社がやることではない。

23/11/30●近刊情報誌『これから出る本』、2023年12月下期号をもって休刊

 一般社団法人日本書籍出版協会が刊行している『これから出る本』が、2023年12月下期号をもって休刊されることにになった。同協会ファ29日に発表した。これは一般の人間にとってはどうでもいいニュースだが、出版・書店業界の人間にとっては結構衝撃的なニュース。

 『これから出る本』は、同協会会員社の近刊予定書籍を掲載対象とする情報誌で、これによって、出版人、書店人は、今後どんな本が出るかの情報を得ていた。もっとも、いまEWBがあるので、わざわざ紙で情報を伝える意味がなくなった。『これから出る本』は、出版物の普及・増売・流通の円滑化等を目的として、1976年5月に創刊されたた。約半世紀で役目を終えたと言える。

23/11/11●漫画アプリは韓国「LINEマンガ」と「ピッコマ」が2強状態

『日本経済新聞』(11/10)が「韓国漫画アプリ 日本が主戦場」とのタイトルで、「ネイバーとカカオ首位争い」を報じた。 
 《韓国ネット2強のネイバーとカカオが漫画配信プラットフォームで陣取り合戦を繰り広げている。主戦場は最大市場の日本だ。ネイバー系の「LINEマンガ」とカカオの「ピッコマ」が読者と作家を奪い合う。韓国事業は成長余地が限られ、日本を突破口として世界市場で稼ぐビジネスモデルを模索する。》

 日本における漫画配信アプリ利用動向は、「縦読み」の「LINEマンガ」が首位の33%、「ピッコマ」が2位30%、帝人子会社のインフォコムが手がける「めちゃコミック」が3位の12%となっている。つまり、韓国2社が2強状態である。出版大手、小学館や集英社なども力を入れているが、この2強には大きく遅れをとっている。日本は本当にデジタル後進国で、いくらコンテンツを持っていても、デジタルビジネスでは韓国にかなわない。

23/10/05●電子書籍流通額9月期は2.8%増で、「縦スクロールコミック」が驚異的な伸び

 10月4に、メディアドゥは電子書籍取次事業における9月期の流通額の成長率を発表した。それによると、総合では前年同月比2.8%増となっている。ジャンル別では、「コミック」が同4.7%増、「写真集」が同8.4%増、「書籍」が同13.7%減、「雑誌」が同0.9%減だが、特筆すべきは。「縦スクロールコミック」のが同約20倍を記録したこと。ちなみの前月の8月期も約13倍を記録している。「縦スクロールコミック」の配信は昨年4月期から始まったが、ずっと大成長が続いている。

23/10/04●『日経産業新聞』と『日経ヴェリタス』が廃刊とFACTAがスクープ

 10月3日、「FACTA オンライン」が、スクープとして伝えたところによると、日本経済新聞社が専門紙として発行している『日経産業新聞』と『日経ヴェリタス』を年内にも廃刊するという。
 原因としてとして「FACTA」は、新聞用紙の高騰などによる赤字の拡大と書き手の不足をあげているが、収益の柱である日経本紙の発行部数がピーク時より半減しているうえ、電子版の有料会員数も頭打ちで、日経の経営状況が厳しいことが最大の理由としている。そんななか、中堅社員の大量退職が止まらないという。
 『日経産業新聞』の創刊は1973年、今年10月で50周年を迎える。
 なお、日経からの正式な発表はいまのところない。

23/09/25●8月の出版市場は前年比で二桁マイナス。記録的な「猛暑」の影響か?

 2023年8月の書籍雑誌推定販売金額が公表された。その額は711億円で、なんと前年比11.3%減、二桁マイナスという惨憺たる結果になっている。書籍は378億円で、同10.6%減。雑誌は333億円で、同12.0%減である。
 雑誌の内訳は、月刊誌が277億円で同12.0%減、週刊誌が55億円で同12.0%減。返品率は書籍が40.2%、雑誌が44.4%で、月刊誌は43.7%、週刊誌は47.6%となっている。
 推定販売金額が二桁マイナスを記録したのは、今年の4月の12.8%以来のことだが、年間に2回も二桁マイナス月がでるのはおそらく初めてではないだろうか。
 原因は明確とは言えないが、記録的な「猛暑」が影響したのではないだろうか。
 となると、今年の年間販売金額は、過去最低を記録するのは間違いなく、様々な影響が、今年の後半か来年にかけて顕在化して来るだろう。

23/09/1●光文社は今年も赤字決算。もはや雑誌ビジネスは成り立たず、新社長は親会社から

 光文社の決算が公表された、売上高179億6800万円で、前年比5.5%増だが、昨年に続く赤字決算。経常利益は7億3400万円の赤字(前年は16億3200万円の赤字)で、当期純利益は4億9300万円の赤字(同12億400万円の赤字)である。
 売上高の内訳を見ると、「製品売上」70億8000万円(前年比7.8%減)、「広告収入」45億1200万円(同8.2%減)、「事業収入他」57億7900万円(同26.0%増)、「不動産収入」5億9900万円となっている。
 結局、増収は「製品売上」以外の3部門によるものであり、それ以外は不振。とくに「製品売上」のなかでも「雑誌」が43億8100万円と、前年比12.2%減と大きく落ち込んでいる。そのため、広告収入も8.2%減を記録。雑誌返品率も47.6%と、ほぼ半数が返ってくるというひどさである。
 経営としていつまでも紙の雑誌にこだわり、「女性誌の光文社」を維持しようとしたことが間違いだったと言えるだろう。デジタル事業など、新しいことに挑戦しようという気概もなく、人材も養成しなかった。
 この惨状を立て直すべく、新社長に、親会社の講談社の子会社である第一通信社社長の巴一寿(ともえかずひさ、59歳)氏が就任することになった。
 ちなみに、出版不況が言われるなか、大手3社は、ともに好決算となっている。その要因は、「漫画」「権利(版権)ビジネス」「デジタル出版」「不動産」の4本柱にある。もはや、純粋な紙出版、書籍や雑誌発行だけで出版社をやっていくなどということはできないと言っていい。

23/08/05●出版市場の崩壊が加速。今後も書店の閉店ラッシュは続く

 紙の出版市場は、いよいよ本格的な崩壊過程に入ったようだ。紙の出版物の売り上げは毎年、前年比で5~10%減少してきたが、今年は10パーセント以上の減少も考えられる状況になっている。
 なにしろ、書店の数が激減している。
 『出版指標年報2023』によると、2023年3月28日時点の書店総店舗数は1万1149店(前年比457店減)だが、このうち坪あり店舗数は8478店(同328店減)に過ぎないのだ。つまり、いまや、全国のリアル書店数は1万店を割り込んでいて、これはピーク時の1960年の2万6000店の3分の1ということ。
 しかも、今後も閉店数は増え続ける。この6月の書店閉店数は62店で、大型店ではTSUTAYAの7店、西友の9店が目立つ。
 いまや、大型店、スーパーやショッピングモール内の書店も存続できない状況になっている。そんなか、書協の会員社の近刊情報誌『これから出る本』(月2回刊)は、12月下期号で休刊(廃刊)することをすでに決めている。

休刊で40年の歴史に幕

 それでも、なんとか書店を続けようと、日販は商業施設などの空間づくりを行う㈱丹青社と連携し、東京メトロ溜池山王駅(東京・千代田区)に無人書店「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」をオープンする。これは、果たして書店というビジネス形態が持続可能かどうかの実証実験である。「日常に本の楽しみを! フラっと、サクっと旬を手に」をコンセプトに、街ごとの顧客にとっての旬のテーマに特化した品揃えで商品展開するというが、果たしてどうなるのか?

23/07/26●2023年上半期の出版市場規模は前年同期比3.7%減の8024億円

 出版科学研究所は7月25日発売の『季刊 出版指標』2023年夏号で、2023年上半期(1〜6月)の出版市場規模を発表。それによると、紙と電子を合算した推定販売金額は8024億円(前年同期比3.7%減)、紙の出版物は5482億円(同8.0%減)、電子出版物は2542億円(同7.1%増)となった。
 紙の出版物の内訳は、書籍が3284億円(同6.9%減)、雑誌が2197億円(同9.7%減)。雑誌は、月刊誌(ムック、コミックス含む)が1839億円(同9.6%減)、週刊誌が358億円(同10.6%減)。月刊誌の内訳は、定期誌が約8%減、ムックが約9%減、コミックスが約12%減。
 電子出版物の内訳は、電子コミックが2271億円(同8.3%増)、電子書籍が229億円(同0.4%減)、電子雑誌が42億円(同8.7%減)。

23/07/14●「もう百科事典はつくれない」という記事に納得

 7月12日の朝日新聞デジタルに『「もう百科事典はつくれない」元編集者が考えるネット社会の未来』という記事がアップされた。平凡社で、事典編集に長年携わった斎藤文雄氏(77)のインタビュー記事だ。
 平凡社の『世界大百科事典』の最新版が最後に刊行されたのが2007年。すでに平凡社では百科事典の編集部すらないという。
 百科事典が出せなくなった理由はじつにシンプル。作っても売れないからだ。
 以下、斎藤氏の話。

《世界大百科事典の項目数は約9万に上り、筆者は7千人にもなります。何と言っても信頼性が大事ですから、筆者はいずれも各界の第一人者や学界の新進気鋭の学者らを選びます。原稿料だけでも膨大です。こうした先行投資を売り上げで回収するわけですが、出版物で回収するのは今や不可能です。電子版もあるとはいえ、ネット展開でそこまで稼げない。最大手の出版社でも、紙の百科事典はもう出せないと思います。》

《百科事典が売れてビジネスモデルとして成立していた高度経済成長期が、むしろ例外的だったと言った方がよいかもしれません。
 居間にズラリと並ぶ百科事典が、一種のステータスだった時代ですね。ほとんど「家具」ですよ。飾って置いておくモノとなってしまったことで、百科事典を「空洞化」させてしまった側面もあるのでしょう。》
《長いこと使っていないという人は、多いでしょう。「家にある百科事典を引き取ってほしい。図書館も古本屋も相手にしてくれない」という問い合わせも、時々あるくらいです。》
https://www.asahi.com/articles/ASR79628JR76UTIL02C.html