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24/08/16●早稲田の学生街からついに書店が消滅というノスタルジックな記事

 産経新聞(8月16日)によると、日本最大規模の学生街、東京・早稲田から一般書店が姿を消すという。この界隈に唯一残っていた「文禄堂早稲田店」(東京都新宿区)が9月16日で閉店することが今月初旬に告知されたからだ。 

「同店では早稲田大学の出版サークルの刊行物を取り扱っていたこともあり、早大生の間では落胆の声も広がっている」と、産経記事は書いている。また、「都の西北でさまざまな発見を提供してきた「知の拠点」の喪失は、近隣の学校や会社に通う多くの人に少なからず影響を与えそう」とも書いている。

 しかし、それは単にノスタルジックに陥っているだけで、スマホ、ネット社会に生きる学生が困るわけがない。また、近隣の人々に影響があるかというと、そんなわけがな

24/08/12●『百年の孤独』初の文庫版が異例の大ヒット

 

 日経新聞もNHKニュースも取り上げたのだから、まさに異例。ラテンアメリカ文学の巨匠、ガルシア=マルケスの代表作『百年の孤独』(1967年発表)が売れている。新潮文庫で6月26日に文庫化して以来、これまでに29万部を発行という「海外文学では前例がない」(新潮文庫編集部)刊行部数を達成した。
 限られた愛書家だけが楽しむ作品、難しい作品とされる同書がなぜここまで売れるのか?
 『百年の孤独』は46の言語に翻訳された世界的なベストセラーで、日本でも1972年に単行本が出版されているが、ほとんど売れていなかった。それが、作家の没後10年となる今年、初めて文庫化された。

24/07/08●業績不信の宝島社に「身売り説」、新潮社に「危機説」

 東洋経済オンラインが『宝島社「身売り説」新潮社「危機説」迎える正念場 附録ブームが一服も、大量配本止められず』(印南志帆記者)とうタイトルで、宝島社、新潮社の窮状を伝えている。 
 宝島社は一時期、著名ブランドや版権キャラクターのグッズの付録を付けた女性誌が大ヒット。コンビニ向けの坂路も開拓し、売れ上げは2018年にピークを迎えた。その後、コロナ禍で売り上げは急降下、そのまま業績は回復しなかった。2023年8月期の売上高は約221億円と、最盛期の約半分、前期比で3割近くの落ち込み。営業損益も、2022年度に21億円、2023年度は19億円と2期連続の赤字。
 2023年7月には経営していた静岡県伊東市のホテル、11月には千代田区一番町にある社屋の別館を売却した。
 さらに、昨年暮れに、カリスマ創業者の蓮見清一氏が急逝した(享年80歳)。そのために、会社の売却もささやかれているという内容だ。
 一方の新潮社は、稼ぎ頭の文庫本「新潮文庫」、週刊誌『週刊新潮』が低迷。一時期好調だったローティーン向けのファッション誌『ニコラ』も失速。5年前の2017年度には182億円あった売り上げは、2022年度に154億円に下落し、昨年度もさらに落ち込んだ。なによりも新潮社はデジタル化に大きく出遅れ、競合する文藝春秋には大きな差を付けられた。

 というわけで、2社の窮状、危機が記事になったわけだが、即、身売り、廃業、倒産などいうことにはならない。記事でも説明しているように、宝島社には、アメリカにTJホールディングスという投資で大きな利益を産んだ子会社がある。また、新潮社は、オーナーが本社がある神楽坂界隈の大地主である。
 よって、本業の出版業は危機だが、会社としては危機ではない。しかし、紙の出版の危機であることには変わりない。

24/06/13●経産相・外務相・文科相 書店関係者と車座対話 「町の書店復活」が「骨太の方針」に!

 このFNNのニュース報道(フジテレビ)には本当に驚いた。経産省が3月に「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げたのは知っていたが、その音頭でこんな無駄な会が開かれ、なおかつ「町の書店復活」を「骨太の方針」に盛り込むのだという。あきれてものも言えない。
 もはや、書店は消えゆく存在だ。政府がいくら補助をしても無駄。税金の無駄だから、やめて欲しい
 すでに、紙の出版は、一部をのぞいてビジネスとして成り立っていない。書店をいかに整理し、その文化的機能をなにに代替させるか、それを真剣に考えて展開すべきだ。
 もし、補助金を入れて国営書店をつくるようなことになったら、それは出版ジャーナリズムの死を意味する。中国の「新華社書店」と同じだ。

 以下、FNNのニュースを転載する。

《減少が続く町の書店を巡り、3人の大臣と直木賞作家などが意見を交わした。 斎藤経産相は東京都内で12日、減り続ける書店の支援などについて、書店関係者と意見交換会を行った。 上川外相と盛山文科相が出席したほか、直木賞作家の今村翔吾氏らが参加した。 インターネットの普及などにより、書店が1つもない自治体は、約4分の1にのぼっていて、経産省は3月に「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げている。 直木賞作家の今村翔吾氏は、「出版界はつながって変えていかなければ、滅んでも仕方がないのではないか。今年が書店復活の元年になると信じている」と話した。 政府は、6月中に取りまとめる「骨太の方針」にも、書店の活性化を図っていくことを初めて盛り込むことにしている。フジテレビ経済部》

24/05/25●講談社がワニブックスの全株式を取得して子会社化

 講談社は5月24日、ワニブックスとの株式譲渡契約について基本合意に達し、全株式を取得したことを発表した。これにより、ワニブックスは講談社の子会社にな理、講談社グループの1社として事業を続ける。講談社広報室によると、ワニブックス側から事業継承の相談を受け、その結果の事業譲渡という。

 ワニブックスは、1979年11月に設立。225万部の大ベストセラーとなった麒麟 田村裕『ホームレス中学生』、川島なお美写真集『WOMAN』、菅田将暉『着服史』などの書籍、月刊誌の『+act.』、『WiNK UP』『アップトゥボーイ』などを刊行してきた。

24/05/10●KADOKAWA連結決算、増収減益に

 KADOKAWAは、5月9日、2024年3月期(2023.4.1~24.3.31)連結決算を発表した。そレによると、売上高2581億0900万円(前年比1.0%増)、営業利益184億5400万円(同28.8%減)、経常利益202億3600万円(同24.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益113億8400万円(同10.2%減)。増収減益の決算となった。「出版・IP創出」は売上高1419億6700万円(同1.4%増)、営業利益103億6000万円(同21.3%減)。新刊点数は5900点(同300点増)に伸長し、返品率は26.8%。

24/05/09●紙の時代は去った。紙の需要ピーク時の半分に

 5月8日のNHKの報道によると、ペーパーレス化によって紙の需要の減少が続くなか、昨年度の国内出荷量が初めて1000万トンを下回り、2007年度のピークからおよそ半分にまで落ち込んだという。
 業界団体の日本製紙連合会によると、ティッシュや印刷用紙、それに新聞などに使われる洋紙の昨年度の国内出荷量は948万トン。前年度から9%減少したという。
 背景にあるのは、もちろん、ペーパーレス化やデジタル化の進展。需要減を受けて大王製紙と北越コーポレーションが原材料の調達や生産面での技術協力などで提携を検討するなど、今後、製紙業界は再編されるもようだ。

24/03/11●書店はどんどん消滅!この10年間で764社が倒産や廃業

 東京商工リサーチの記事によると、2014年以降、この10年間で、書店の倒産・休廃業が新設を上回る状態が続き、10年間で764社が市場から退出したという。

 書店の倒産(負債1000万円以上)は、10年間で140社。  ピークの2016年は25社発生した。2016年は、出版取次の(株)太洋社破産。連鎖するかたちで18社の書店が、次々と倒産や廃業に追い込まれた。その後、書店の倒産は一進一退が続き、コロナ禍では資金繰り支援や巣ごもり需要などで、倒産は減少に転じたが、2023年は一気に13社に増えた。倒産以外で事業を停止した休廃業・解散も増え続けてきた。

一方、書店の新設法人は、2013年がピークも81社。この年は、倒産と休廃業・解散の合計が75社だったので、6社の純増だった。 しかし、2014年からは純減に転じ、2019年は56社まで純減が拡大した。コロナ禍の2022年も21社の純減で、2014年から8年連続で純減が続いているという状況という。

24/03/08●「Dr.スランプ」の漫画家・鳥山明さんの死は世界でも大報道。国内の低評価は異常。

「Dr.スランプ」や「ドラゴンボール」などの超ヒット作を生んだ漫画家の鳥山明が、68歳で死去したことで、世界中で大報道が繰り広げられている。なんとあの「NYタイムズ」まで大きな記事にしている。

 思えば、鳥山さんは、日本の「漫画」を世界の「MANGA」に押し上げた功労者であり、日本より海外での評価のほうが高い。2019年には「芸術・文学の領域での創造と、世界での普及に傑出した功績のあった人物」に授与されるフランスの芸術文化勲章「シュバリエ」を受章している。

 これを日本に置き換えれば、「文化勲章」を受賞してもおかしくないが、これまで漫画家が文化勲章を受賞したことはない。日本政府の政治家は、漫画を読んでいるにもかかわらず、その文化的価値を理解していない。

 鳥山さんの死因は「急性硬膜下血腫」と発表された。急性硬膜下血腫は頭部の外傷などで、脳と硬膜のすき間に血がたまって脳を圧迫する疾患。死因について、これ以上の発表はないが、いずれにせよ、この時代、68歳は逝くにも早すぎる。

24/03/07●経産省が書店支援の「書店振興プロジェクトチーム」設置という愚策を発表

 本当に、この国の政府の時代錯誤ぶりは救い難い。経済産業省は、3月5日、全国で減少する町の書店を支援する大臣直属の省内横断組織「書店振興プロジェクトチーム」を設置したと発表したのだ。

 この発表で、斎藤経済産業相は、(町の書店は)創造性が育まれる文化創造基盤として重要だ」としたうえで、「いまある様々な政策をどのように活用している例があるか、創意あふれる工夫に光を当てていきたい」と述べたのだから、呆れるというしかない。

 すでに、町の書店は、デジタル社会の進展で、全国の市区町村のうち、地域に書店が一つもない自治体は約4分の1に達している。これは、当然の成り行きであり、そのことが、文化を後退させているなどということはない。

「書店振興プロジェクトチーム」は、映画や音楽などのコンテンツを扱う部署に事務局を設け、キャッシュレス決済や中小企業を支援する部署も参加し、今後、書店経営者などへのヒアリングを行い課題を把握するという。完全な税金の無駄遣いである。

 こんな愚策を臆面もなくやれるのは、自民党の「街の本屋さんを元気にして日本の文化を守る議員連盟(幹事長は齋藤経産大臣)」の存在がある。時代の変化で、自然に衰退していく産業を守るというのは、社会主義国家でもやらない。